2018年03月26日
わびさび
日本には侘び寂びを愛する文化というものが根付いている。
それは原色よりも枯淡を愛する文化であり、あまりはっきりと物事を言葉にせずに、雰囲気で察する事をよしとする文化でもある。
その曖昧さがわかりづらさと捉えられてしまうようで、外国人が「日本人の考えていることはわからん!」と言うという話は一昔前にはよく聞かれた。
まぁ昨今では経済もグローバル化され、ビジネスシーンにおいてはむしろ自分の考えをはっきりと主張する事がよしとされるようになっているが、あくまで商売は商売。
生活の中ではまだまだ日本には「侘び寂び」の文化が密かに残っているのです。
とまぁこんなことを言うと、「今の日本のどこに侘び寂びが残っているんだ!」と憤る方もいるかもしれない。
確かに私自身そう思ってしまう時がないわけじゃない。電車に乗れば鏡を見ながら化粧に勤しむ女性を見かけるし、時にはおぱんつ全開で座ってる女子高生すら見かける。
もう「隠せ!」と。「恥じらいながら隠せ!」と。「むしろ恥じらいながら見せろ!」とか言いたくもなるわけなんですが、とにかく皆自分の欲望を「隠す」ことを忘れてるかのようにも思えてしまうのです。
(「お前も隠せ!」とかいうご意見は本日受け付けておりません。)
さて、この「隠す」という行為は非常に重要な意味を持っていて、隠されるからこそドキドキする。隠されるからこそ奥ゆかしい、隠されるからこそ知りたくなる。
遠い昔、ヘアヌード写真集が解禁となった時、その代名詞ともなった宮沢りえの「サンタフェ」て写真集があったけれど、あれなんてあまりに堂々と毛が撮られてたもんだから、もーエロくもなんともなかった。駄作。カネ返せ。
と一例を出すまでもなく、物事はなにもかにも全部見せればいいってもんじゃない。隠匿の美、とでも言うべき「隠す」からこその素晴らしさ、というものも確かに存在する。
伝えたいことをそのまま言葉にせずに、あえて婉曲的な言葉を用いる。あえて情報を不完全なものにするからこそうまくいく。それこそが日本的侘び寂び文化の特色であり、その素晴らしさなのです。
そんなことに気が付いたのは、とある日の夜の事でした。
その日は翌日の仕事に備えてビジネスホテルなんぞに泊まることになったんですが、あーゆうホテルってばどこも似たようなつくりじゃないですか。
狭い部屋に机とベッド、ちっこいテレビと冷蔵庫にユニットバス、パックのお茶と聖書・・・。
もうびっくりするくらいどこからどこまでも一緒なもんで、着いて2分でやることがなくなった。
しょーがないからテレビでも見るかと目をやると、そこに一枚の番組表が。
その小さな紙きれの中に、現在の日本で失われつつあるわびさびが、確かに残っていたのです。
【団地妻 ア〇ル中〇し】
【パ〇パンスジッ娘 6人ロ〇ロ〇祭!!】
そう。それはいわゆるアダルトチャンネル専用の番組表でした。
本来ならそこには男の本能に訴えかけるタイトルが並んでいるわけなのですが、侘び寂びを知る者はそんな無粋な事はいたしません。なんとその番組名のほとんどに〇が混ざっているのです。
〇がなければただの下らないAVタイトル。そこに〇という奥ゆかしさを込めることで途端にそこに侘び寂びが産まれてくるのです。
上に挙げた2タイトルも、普通に考えれば「ナ」であり「出」であり「イ」であり「リ」なんでしょうが、それをあえて確定させないことでそこに(ひょっとしたら・・・)という揺らぎが生まれる。その揺らぎが興味を呼び、味わいを産むわけなのです。
【ビ〇リーヒルズ SEX白書】
これも素晴らしい。
「隠れてねーじゃねーか!!」
と言う方もいるやもしれません。
確かにこのタイトル、一見すると肝心の「S〇X」が隠れていません。しかしこれはあえてそうしているのです。一見隠す必要のない「ビバ〇ーヒルズ」、そこだけにあえて伏字を施す事により、いわば「頭隠して尻隠さず」な風情を醸し出しているのです。
もう一度よく見てみましょう。声に出して言ってみましょう。ベッドの上で恥じらいのあまり両手で顔を覆った女子〇生が浮かんでくるかのようではありませんか。
【念願の〇〇になった!産婦人科医編】
これとかもう既にAVかどうかすら定かではないですからね。
(念願の何に?何になったんだ?オイ!?)と別の意味でどきどきしてしまいます。
【三十路~最高〇2歳まで!!淫欲熟女特大号】
これもむしろホラーに近いですね。〇に入るのは5なのか?6なのか?ま、まさか8なのか!?9なのか!!?怖い・・・・・よかった・・・2桁でホントよかった。
【友達の〇親を8件連続やりまくる俺!】
これなんかもうこっちに対する挑戦状ですからね。少なくとも「母親」なのか「父親」なのかくらいははっきりさせて欲しい!
はっ!ひょっとして・・・「両親」?
とまぁこのように自由に想像できる余地がある、ってことは大切だと思うんですよね。
なんでもかんでもハッキリさせりゃいいってもんじゃない。
裏ビデオよりモザイクがいいって時もあるじゃないか!
いや、想像力を忘れないためにもむしろモザイクを尊ぶべきだ!!
そんなことを考えながら眠りに就くのでした。
うん。侘び寂び。